信用調査会社のビッグ2、帝国データバンク・東京商工リサーチを徹底比較する
2018/04/26
「帝国データバンク」と「東京商工リサーチ」って何がどう違うの?
取引先の与信管理、信用調査をしようとするときこの疑問にぶつかります。両社合わせて信用調査のシェアは80%超といわれており完全な寡占状態となっていますから、どちらか二者択一にならざるを得ないのですが、「両社はほとんど一緒で違いはない」などと言う人もいます。実際にそれぞれのホームページなどを見ても差別化されるべきポイントや他社との違いなども分かりづらいのではないでしょうか。
そこで、両社のどちらを選ぶべきなのか理解を深めるために、与信管理の目的で使う企業概要データや企業信用調査について徹底的に比較をしました。きちんと項目毎に比較してみると、どちらを選んでも変わらないところ、使い勝手の良し悪し、際立った特徴などが炙り出されました。今後の信用調査会社選びにお役立ていただければ幸いです。
一方で、ビッグ2の企業信用調査でも与信管理に役に立たないケースが稀にあります。
こうした場合にはどうしたら良いかも合わせてご紹介いたします。
目次
新規取引などの際に与信管理の一環として使用される?調査会社の企業情報には、大まかに大別しますと① 企業概要データと② 企業信用調査の二つがあります。この二つの違いは企業情報をカバーする広さや深さです。利用者の取引内容や規模、支払い条件などにより使い分けられるのが一般的です。
新規取引の際、「念のため相手企業を知っておく」レベルで使われます。
例えば、支払い条件が代引きや前払いである、比較的小額の取引であるなど回収のリスクが低い場合などで利用されるケースが多いです。かつては紙やFAXでの納品もあったようですが、現在は「インターネット企業情報サービス」として検索・閲覧がWeb上で完結されています。
社名・所在地・社員数など基本的な情報の他に、役員、連結子会社、取引銀行、仕入先、販売先、事業所、業績(過去3期~6期、最新など)、特色、業績予想、代表者プロフィールなどをA4用紙1頁にまとめた企業情報のダイジェスト版とも言える内容です。
信用調査会社から全国の企業宛に郵送される「企業情報調査票」といったタイトルのアンケートに回答があった企業情報がデータベースに収録されて「企業概要データ」として販売されています。2大調査会社が宣伝文句に使っている「全国×××万件収録」などの件数はこのデータベースの総数のことです。このアンケートはおおよそA4用紙2頁程度のものです。求められる項目は多岐に渡るため、提出任意のアンケートとして記入するには意外と面倒です。簡単に埋められる項目だけ書いて回答する企業も沢山あり、購入した企業概要データが虫食い状態になっているものが散見されるのはこういった事情からです。
BtoBの事業において、新規取引や大型受注などで通常の支払い条件 (月末絞め翌月末など) で受注する際には、相手企業の財務資産状況・業績の推移・企業の安定度などで債権回収に支障が出る可能性がないかどうかを確認しておく必要があります。こうした時に一般的に利用されるのがこの企業信用調査です。
対象企業の基本情報に始まり、登記情報、資産、株主、役員構成、代表者経歴、主要取引先 (仕入れ先・得意先共)、取引銀行、財務諸表、財務諸表分析に加え、調査会社独自基準に照らした評点、文章による総評などが記載されます。報告書のボリュームとしてはA4で20~30頁程度となります。
企業信用調査の場合、基本は対象企業への訪問による聞き取り調査です。
まず、調査員が特定匿名のクライアントからの調査依頼だということを告げてアポイントを取ります。報告書のフォームに従ってインタビューを行い、財務諸表を提出してもらい、得られた情報から調査会社の独自の評点をつけて、調査結果についての総評 (コメント) が付く形で報告がまとめられます。調査対象企業から財務諸表が得られれば添付されますし、企業や代表者の資産関係として不動産登記情報なども合わせてレポートされます。このインタビューの申込みを受け入れる時点で、その企業にはある程度自社の情報を開示する意思があるとの判断材料にはなります。別の見方をすれば、最大手調査会社の信用調査報告として収録されればビジネス上の信用が増すと期待してインタビューを受け入れている中小企業は多いはずです。一方でインタビューに応じたからすべての項目に対して正直に答えているかと言えばそれはNOです。この聞き取りも前項のアンケートと同様に任意回答ですから、都合の悪いことがあれば特定の項目に対して回答を控えたり虚偽の返答をするケースもあると言われます。財務諸表を提出しない企業も沢山あります。
企業信用調査を利用する場合、まず契約した調査会社に対象会社の調査報告書が収録されているかを確認します。既に過去に聞き取り調査が行われ報告書が存在する場合、利用者が過去の取材情報で良いと判断すれば即日で報告書を入手することができます。その報告書の取材時期が2ヶ月以内の場合は新規取材調査と同じ金額を要します。2ヶ月以前の報告書だった場合、料金は半額になります。より慎重に与信管理を行いたいのであれば、最新の企業情報を入手すべきですが、ある程度の目安が得られればいいのであれば、過去の報告書で済ますことでスピーディーかつ安価に手に入れることができます。
帝国データバンクも東京商工リサーチも企業信用調査以外にも沢山のサービスを提供しています。このため、ホームページのページ数は膨大ですし、様々なサービスの価格表も掲載されていて、一見するとどれを見ていいのか分からなかったりします。そこで、両社の基本情報などと共に与信管理によく使用される「企業概要データ」と「企業信用調査」に絞って、徹底比較をしてみたいと思います。
両社の基本情報を比較してみると直ぐに分かるのはその規模です。業界1位2位といっても帝国データバンクが売上高で2.7倍、従業員でも2倍と東京商工リサーチを大きく引き離しています。信用調査のシェアで見ても帝国データバンク約60%、東京商工リサーチの約20%です。
例えばグループ企業間で与信情報を共有する、取引企業同士で評点の物差しを共通にするなどのケースでは、圧倒的シェアの帝国データバンクの方が運用しやすいかもしれません。
両社の料金体系は非常に似かよっているために、良く比較しないとどちらを使うべきか判断がつき難いです。利用する企業の立ち位置、扱い商品、顧客層、営業スタイルなどによってはコストに差が出てくる可能性があります。ここでは1章で紹介しました「企業概要データ」「企業信用調査」にスポットを当てて比較をしてみたいと思います。
企業概要データをインターネット経由で入手することをメインにしてのご利用をお考えならば、東京商工リサーチの方がコストは抑えられそうです。
①料金面はまったく同じ
帝国データバンクは「問合票」というチケット制、東京商工リサーチはポイント制を導入していますが (いずれも有効期限1年間)、金額で並べてみるとお分かりの通り全く同じです。この面ではどちらを選択されても変わりありません。強いて両社の違いを抽出するとすれば下記の2点となるでしょうか。
②納期面は東京商工リサーチがやや早い
公称では東京商工リサーチの方が、通常で4営業日、最短で2営業日短いです。これは担当する営業マンの力量次第で短縮できる範囲内かもしれません。
③既調査収録状況
この面では両社とも何かを発表しているわけではありませんが、両社を良く知る同業者の談話では中小・零細企業のヒット率は東京商工リサーチの方が多いとのことです。営業ターゲットが中小企業向けのサービスや商品の場合は東京商工リサーチを選択したほうがいいかもしれません。
基本情報や業績、従業員、代表者など調査項目は両社とも漏れなく網羅されており、ほとんど同じです。この点においてはどちらを選択されても与信管理の上で支障が出ることはないでしょう。
①評価(評点)について
東京商工リサーチは「企業診断 (評点)」という独自の評価項目を報告書の最初に掲げており、帝国データバンクには無い「リスクスコア履歴」「直近評点とリスクスコアのポジョション」という項目でグラフィックを用い視覚的に対象企業の評価をユーザーに伝えようとしていることが窺えます。
一方、帝国データバンクの場合はその圧倒的なシェアから利用顧客が多いため、企業の信用度をその評点だけで判断し取引先等と共有するケースがあります。
例えばグループ会社への指示で「帝国データの評点50点以上なら取引OK」といった使われ方です。
②定性的コメントについて
帝国データバンクでは「業績特記事項」「事業内容」「会社の特色」「最新期の業績」「資金現況と調達力」「最近の動向と見通し」など多くの項目で詳細に定性的なコメントをしており、得られたデータだけでなく調査員による分析と取材を通じたメッセージ性を見ることができます。この点においては帝国データバンクに軍配が上げられそうです。
報告書の見栄えはその内容の重要度に比べれば瑣末なこととも言えるかもしれません。
しかし、その見やすさは「好き」「嫌い」といった感覚的なことを決定するには重要なファクターだとも考えられます。
帝国データバンクの報告書は後半の財務諸表などを除いて、本文中のデータを示す表には縦の罫線がなく、横方向の区切りはスペースだけです。一方、東京商工リサーチの報告書はセルの上下左右罫線がある表の形式になっています。どちらが見易いかと言えば後者です。
帝国データバンクの報告書は白黒グレーのみの単色で作られています。一方、東京商工リサーチはフルカラーで編集されており、大項目を青字にしたり、ビジュアルで見せるところは何色も使ったりして工夫して作られています。しかし、このフルカラーには一長一短があり、プリントアウトする際に、カラー印刷できない事業所やカラープリントの経費を節約したい企業にとっては少々迷惑かもしれません。パソコンで見る分にはカラーが断然見易いですね。
新規取引などの際に企業信用調査を利用するプロセスはおおよそ下図のようなフローになります。
既存データが無く、最終的に新規の調査依頼をしたものの、調査対象の企業がインタビュー(取材)を拒否するケースが時々見られます。このような場合はどのような判断をするべきでしょうか?代金前受けや代引払いを要求して受け入れてくれればいいですが、それはできないとなった場合、相手企業の状況を把握もせずに取引開始をするわけにはいきません。取引をしないという選択肢もあるかもしれませんが、むざむざ商機を逸するのも残念なことです。
しかし、残念ながら帝国データバンクも東京商工リサーチも直接のインタビューではその看板力もあってしっかりと情報を取ってきてくれますが、取材拒否となると打つ手が無くなります。
「側面調査」とは、正面玄関から「調査会社でございます」と調査取材の申込みをして拒否された場合、調査と悟られないように対象企業にアプローチしたり、周辺・関係先からの情報を収集したりして相手企業の状況を炙り出す調査のことです。警察や探偵が相手に悟られないように秘密裏に情報収集することを「内偵」と言いますが、この内偵の能力を持っている調査会社でないと、対象企業に調査だと気が付かれずに内情を探り出すことはできません。
側面調査の場合、対象企業に財務諸表などの提出を直接求めることはできませんから、定量的な数字による報告は断片的になる可能性は高いです。しかし、様々な手法を駆使して調査対象企業からの情報収集を実施しますので、経営状態・安定度・信用状況などは充分に情報を得ることができます。逆に直接のインタビューでは都合の悪いことを隠したりされがちですが、側面調査であるが故にネガティブな情報が炙り出されることもよくあります。日頃 信用調査を使っている会社でも平行して側面調査を使うことで、より深く調べたり、対象企業の代表者のバックグラウンドを掘り下げたりされるケースもあるのです。この側面調査の場合、費用はケース毎、要望事項毎に異なってきますので、見積依頼をして確認するのが通例となっています。
残念ながらビッグ2の両社にはこの側面調査の機能がありません。そこで側面調査を提供している調査会社としてご紹介いたしますのは、筆者が所属する総合調査会社「株式会社トクチョー」です。手前味噌ではありますが、1965年創業の歴史があり、信用調査、人物調査、尾行調査など幅広く調査メニューを用意しており、内偵による情報収集を得意としています。ビッグ2両社に、過去取材された既存調査データが無く、新たな取材も拒否された場合の相談先として多くの案件を取り扱っています。
企業信用調査は与信管理における最も重要なツールです。
帝国データバンクか東京商工リサーチかどちらを選択されるかは、ここに紹介しました比較情報などを参考にされるとともに、通ってくる営業員の対応の早さ・丁寧さ・柔軟さなどをしっかり見極められて選ばれることをお勧めします。両社には、信用調査以外でも様々なサービスメニュー・データメニューがあり、企業経営において手となり足となり役に立つ存在になってくれるでしょう。
また、信用調査で事足りない場合は総合調査会社「株式会社トクチョー」にご相談いただければ多くのことが解決できます。是非ご一報くださいますようお待ちしております。
信用調査で判断材料不足ならトクチョーにご相談を
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