就活生は要注意!人事採用ではSNSの「いいね!」先まで調べられている
2018/07/26
総合調査会社であるトクチョーのもとには、年間、数千人の採用候補者を対象とした調査の依頼が舞い込んできます。中には、創業間もない頃から継続して、採用に関わる調査でお取引をしていただいている企業様も少なくありません。
業界大手の上場企業であるA社は、四半世紀以上ものお付き合いがあり、一貫して採用における内定候補者に対するリファレンスチェック(候補者の経歴や人柄を関係者に問いあわせること)を実施しています。
とはいえ、当然のことながら時代とともにチェック内容は変わってきました。
最近はFacebookやTwitter、InstagramといったSNSを利用する学生や、転職希望者が多いため、他社の例にならってA社も応募者向けのFacebookページを作ったり、PRのために企業Twitterを開設したりしています。また、SNSを活用したダイレクトリクルーティング(獲得したい人材を探し出して、企業が直接コンタクトする採用活動)も取り入れようとしているそうです。
それとともにA社では、アルバイト店員が冷凍庫や食洗機の中に入った写真などを面白半分でTwitterにアップする、いわゆる「バカッター」の炎上が相次いだことから、採用候補者のSNSもチェックするようになりました。
A社の人事採用責任者であるB課長へ、最終面接前の新卒採用候補者数十名のSNS利用状況と、リファレンスチェックの結果を報告した際の一コマをいくつか紹介します。
目次
B課長 「今回も大量の調査ありがとうございました」
トクチョー 「こちらこそありがとうございます。今回は何名か本人と思われるSNSアカウントの利用が確認できました。まずWさんです」
B課長 「WさんはC大法学部で優秀な成績、サークル活動でいろんなボランティアを経験している学生でしたよね。面接でもハキハキと受け答えしていたのをよく覚えています」
トクチョー 「ローマ字名でWさんと同じ名前のTwitterアカウントで、同姓同名の別人という可能性もありますが、本人と思われる写真もアップされています。こちらの投稿とプロフィールをご覧ください。特に問題発言はありませんが、同一人物だとしたら何か参考になるかもしれません」
Wさんと同名のTwitterアカウントには、音楽バンド活動に関する告知を始め、さまざまな曲やアーティストに対する辛口の批評がYouTubeのリンク付きでつぶやかれていました。
また、面接ではボランティアの経験が豊富であると言いながら、投稿の中には「震災復興のためにボランティアするより、俺は音楽で希望を届けたい」というつぶやきもありました。
そもそも、過去の投稿をさかのぼって見ても、ボランティアに関する投稿はそれだけでした。
プロフィール欄には、C大法学部在学、Wの経歴と一致する出身高校・多摩西部在住、就活中であることなどが記載されているとともに、末尾には「13歳からベース一筋、学生時代はバイトとバンド(とちょっとだけお勉強)しかやってません\(^o^)/」と書かれていました。
B課長 「このライブの写真からすると、ほぼ間違いなくWさんですね…」
トクチョー 「ボランティアをしている感じは全くないですね」
B課長 「二次面接でしていたボランティアの話、すごくよかったんですよ。作り話だったのかなぁ…。最終面接で本当にボランティアをいろいろ経験していたのか、詳しく突っ込んで聞くしかないですねぇ」
話は、Xさんに移ります。
トクチョー 「次はXさんです。InstagramとFacebookのアカウントで、名前が本名そのままですし、メールアドレス検索でヒットしましたので、本人のアカウントで間違いないと思われます。Xさんも特に問題発言や炎上するような写真の投稿はありません。あえて調べたわけではなく、一見して誰でも気づくレベルで、Instagramに投稿している写真とFacebookのプロフィール欄で表示される『いいね!』の対象にいくつか傾向が見られるようです」
XさんのInstagramには、学生同士の酒席における楽しそうな写真や、おいしそうな食べ物のほかに、社会的なデモに参加した自身の写真や、デモの様子を撮影した写真がいくつもアップされていました。
また、Facebookでは、趣味のアニメ関係のアカウント以外に、特定政党の公式アカウントや機関紙、地方支部、同政党の委員長など、議員数十人のアカウントに対しても『いいね!』をしていることがわかりました。
(※トクチョーでは、出生地、国籍、思想・信条、家族に関することなど、就職差別のための調査、就職差別を助長するような調査は一切承っていません。あくまで、炎上してしまうような社会通念上非常識と思われる投稿を本人名義でするなどのSNS利用状況を確認し、報告しています)
トクチョー 「学生時代に少なくとも20回以上、さまざまなデモに参加されていたようです。Facebookの公開された投稿は、政治的なニュースや発言のシェアがほとんどでした」
B課長 「面接でも正義感が強くて行動力があるイメージでしたけど、これを見る限りその通りのようですね。うち(A社)は特定政党支持者に対してふるいをかけるような差別的なことはしませんから内容は問題ありませんが、SNS実名アカウントの公開投稿はSNS利用ポリシーで控えてもらっているので、入社された際は注意を促したいと思います」
続いてYさんです。
トクチョー 「Yさんは米国ではやっているTumbler(タンブラー)とTwitterのアカウントを本名で利用しているようです。プロフィールの年齢が一致していて、写真も同一人物のように見えます。そこで、ちょっと気になる投稿がありました」
B課長 「気になるとは?」
トクチョー 「実はTwitterに、〇〇地方裁判所の建物写真とともに『裁判所なう』というつぶやきがあったのです。そのつぶやきの少し前に、Tumblerの方にはYさんのものだったと思われる、大破したバイクの写真もアップされていました」
B課長 「ということは、何らかの事故を起こして裁判所に行った可能性があるということでしょうか?Yさんは真面目で控えめなタイプに感じていたので、大型バイクに乗っているとは意外ですね」
トクチョー 「破損バイクの写真と、裁判所の写真の因果関係までは分かりませんでした。ただ、御社のエントリーシートや、指定の履歴書などに賞罰を記載する箇所がなければ、面接で確認するという方法もあると思います」
その後、B課長は担当面接官に対して、念のため全員の面接時に賞罰があるか確認してほしい旨を伝えました。最終面接で賞罰を聞かれたYさんは、スピードの出し過ぎで転倒し、ガードレールに突っ込む自損事故で罰金刑となったことを告白したそうです。
トクチョー 「最後に、Zさんなのですが、学歴詐称の可能性があります」
B課長 「え!? 国立D大学の院卒予定の、あのZさんですか!? 大学院の成績証明書も提出させています。本当ですか?」
トクチョー 「大学院の方ではなく、国立D大学商学部の方を卒業していない疑いがあります。実は、D大学の図書館に卒業生名簿があるのですが、それを確認したところZさんの卒業年の前後3年間も含めて、Zさんの氏名がないことを確認しました。苗字が変わった可能性も考慮して調査しましたが、下の名前と一致する卒業生もいないことを確認しました」
学部の卒業について調査をするきっかけとなったのは、発見したZさんのFacebookアカウントのプロフィール欄に、小学校から高校までの卒業校と、D大学大学院に在籍中の学歴は記載されているものの、D大学商学部卒業の記載がなかったためでした。
トクチョー 「トクチョーでは、卒業証書のコピーを偽造した採用候補者の例に遭遇したこともあります。もしかするとZさんが提出した成績証明書も偽造されたものであるかもしれません」
B課長 「大学院卒業予定者の採用候補者からは、学部の卒業証明は提出させていないのです。まさか、卒業証書まで偽造できるとは知りませんでした。確かにコピーだと、偽造しやすいのかもしれませんね。Zさんの成績証明書については、大学院に確認してみようと思います」
Zさんが提出した大学院の成績証明書は本物でした。しかし、B課長は人事部長や人事担当役員と相談して、面接でD大学の学部時代のことを聞くことにしました。
すると驚くべきことに、Zさんは「D大学院に在学しているので、勢いで大学名を間違えて記載してしまいました。正しくはE大学の商学部でした」と言い出したのです。面接結果はご想像の通りです。
しばらくして、B課長から事の顛末をお聞きしました。
「勢いで間違えるわけがないんですが、どうやら私立の中堅校であるE大学卒業では、見栄えがよくないと考えたようです。しかし、一流校のD大学院に入って、学歴ロンダリングはできているのに…。学生の心理はわからないものですね」
企業にとってみれば、採用人数を確保したい、良い人材を採りたいという以上に、いわゆる「モンスター社員」や「トンデモ人材」を採らないというリスク管理も非常に重要です。
中途採用の場合は、前職などのリファレンスチェックをすることで、ある程度スキルと評判を客観的に知ることができます。これに対して新卒採用の場合、指導教授からの推薦状をもらえればいいのですが、現実にはそこまでリファレンスチェックをしている企業はほとんどありません。
トクチョーには、新卒採用の失敗による社員に関する相談も寄せられます。
多くの人事担当者様の話では、面接だけで見破ることはできないというのが、共通認識のようです。
総務省情報通信政策研究所の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、FacebookやTwitterなどの主要なSNSのどれか一つ以上利用している人の割合は、過去5年間で41.4%から71.2%に増加しています。20代に限っては、97.7%とほぼ全ての人がSNSを利用しているという状況です。
面接だけでは分からない性格や日常もSNSを見れば分かることから、採用候補者のSNS利用をチェックするというニーズが生まれ、調査依頼は確実に増えています。
実名登録が原則のFacebookだけでなく、さまざまなSNSを実名で使う方は少なくありません。
また、ニックネームしか表示していなくても「身バレ」といって、投稿者の住所・氏名だけでなく勤め先までネット上で暴露されているケースもあります。
勤め先の企業も「〇〇で炎上した人間を雇っていた××社」という風評が残り続けることもあるため、採用候補者が身バレするようなアカウントで、非常識な使い方をしていないか確認しているのです。
今日もトクチョーはお客様からの依頼を受け、SNSをチェックしています。
(総合調査会社 トクチョー)
※この記事は事実を基にしていますが、登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。守秘義務のため、依頼者や調査対象者が特定できないように、事件の詳細は設定を変更しています。
※本記事は、トクチョーがダイヤモンド・オンラインに寄稿した「調査員は見た!不正の現場」シリーズの「就活生は要注意!採用現場ではSNSの「いいね!」先まで調べられている」を改題・編集したものです。
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