経済活性化に向けた切り札!日本の経済成長の原動力となるスタートアップ企業の定義とは?

2022/12/16

スタートアップ

2022年1月5日に行われた岸田首相の年頭記者会見にて、経済再生の要となる「新しい資本主義の実現」について多くの発言がされました。そのうえで、2022年を「スタートアップ創出元年」とし、スタートアップ企業を育成する「スタートアップ育成5か年計画」を年末までに策定する方針を打ち出し、イノベーションの鍵となるスタートアップを5年で10倍に増やすと宣言しました。
日本経済の持続的成長、日本が直面する様々な社会課題の解決を担う主役とされ、戦後すぐの第一次創業ブームに続く、第二次創業ブームを実現し、これからの日本経済のけん引を期待されたスタートアップ、本記事ではスタートアップの解説、スタートアップに欠かせない支援策、EXIT戦略をまとめました。

 
1. スタートアップとは

英単語を直訳すると“Startup”には「行動開始」「操業開始」などの意味があり、アメリカ・シリコンバレーで「新しく設立されたばかりの企業」を意味するワードとして使われ始めた英語として日本に入ってきました。日本のビジネスの場では「立ち上げ」や「起業」などの意味で使われます。

 
1-1. スタートアップの定義

現在、スタートアップに明確な定義はありませんが、かつてのGoogle、Amazon、Meta (旧:facebook)、Apple、Uberといった、まだ前例の無い領域や市場を狙い、イノベーションを起こして短期間のうちに圧倒的な成長率で事業を展開する企業を指します。
また、経済産業省中国経済産業局が発表した「平成30年度地方創生に向けたスタートアップエコシステム整備促進に関する調査事業報告書」では、下記3点がスタートアップの特徴と記載があります。

・スタートアップ3つの特徴
特徴1 成長スピードが速い
特徴2 ビジネスに斬新性があり、イノベーション、社会貢献を意識している
特徴3 出口戦略(イグジット)を検討している

 
1-2. スタートアップとベンチャーの違い

「スタートアップ」と「ベンチャー」は混同されて使われることが多いです。英単語の意味から見てみると“Startup”には「行動開始」「操業開始」という意味があり、“Venture”は“adventure”からきていて「冒険的思考」「投機的」などの意味があります。アメリカ・シリコンバレーで活躍する投資家たちを“Venture Capital (VC)”とよびますが、そもそも”ベンチャー企業“という単語は、日本人が作った和製英語になります。ではどうして「ベンチャー企業」という使われ方をするようになったのでしょうか。一説によると、新規事業に取り組むことを「ベンチャービジネス (VB)」と呼び出したことが起源とされています。ここから「ベンチャー」という言葉の本来の英語の意味とは違う、いわゆる和製英語として使っているのです。日本では、「ベンチャー」が浸透してから、IT界隈を中心に「スタートアップ」という言葉も徐々に使われるようになってきました。では、日本ではどのように使い分けをしているのでしょうか。スタートアップとベンチャーは下記の3点に違いがあります。

 
スタートアップとベンチャー
スタートアップとベンチャー
 

スタートアップ企業とベンチャー企業を見分ける方法は「急成長が期待でき、今までにない革新的なビジネスモデルか」で、判断ができます。
 

1-3. 世界のスタートアップ企業

「創業10年以内」「評価額が10億ドル以上」「未上場」「テクノロジー企業」の4条件を満たすスタートアップ企業を「ユニコーン企業」とよびます。
日本もユニコーン企業を創出しているが、そのスピードは、米国のみならず中国やインドにも及ばず、世界との差が開いている状況です。
米国などではデカコーン (100億ドル超)、ヘクトコーン (1,000億ドル超) と呼ばれる企業価値の大きいメガスタートアップも存在しており、数に加え、大きさでも世界との差が生じています。
※2022年2月、経済産業省公表の「第4回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会」より

アメリカの調査会社が2021年に公表したレポートによると、世界の国別ユニコーン企業数ランキングは1位:アメリカ 369社、2位:中国 138社、3位:インド 32社、4位:英国 29社、5位:ドイツ 17社、6位:フランス 14社、7位:イスラエル 13社、8位:ブラジル 12社、9位:韓国 10社、10位:カナダ 9社となっており、日本は5社と少ない数となっています。

世界のユニコーン企業ランキングベスト5
1位:ByteDance(中国) 動画共有サービスTikTokなどを運営するテクノロジー企業
 評価額:約1,400億ドル(唯一のヘクトコーン企業)

2位:Stripe(アメリカ) オンライン決済サービスおよびSaaS企業
 評価額:約950億ドル

3位:SpaceX(アメリカ) 航空宇宙メーカー
 評価額:約740億ドル

4位:Didi Chuxing(中国) ライドシェアリング事業
 評価額:約620億ドル

5位:Instacart(アメリカ) 食料品の即日配達サービス
 評価額:約390億ドル

日本のユニコーン企業が少ない理由として、VCからの投資が少ない、独立系のベンチャーが少ない、起業しやすい環境が整っていないことなどが原因と言われています。

 
2. スタートアップ支援

アメリカ・シリコンバレーが発展した基盤には、アメリカ政府の支援がありました。
1958年の「Small Business Investment Company制度 (SBIC制度)」を創設し、一定の要件を満たすVCに対して、政府が社債の買取という形で投資資金を供給し、ERISA法の改正 (公的資金の運用改善)、キャピタルゲイン減税などの一連の施策でVC産業が育ち、今日のシリコンバレーに「起業とイノベーションの聖地」というイメージが確立されるに至ります。
日本においても、国や自治体が主体となり、補助金・助成金を支給することでスタートアップ支援を行っています。ここでは支援の一部を紹介いたします。
 

2-1. 経済産業省スタートアップ支援策

METI Startup Policies~経済産業省スタートアップ支援策一覧~
経済産業省では2022年6月に「METI Startup Policies~経済産業省スタートアップ支援策一覧~」を刊行し、補助金や融資などスタートアップの成長を直接サポートする支援策や、スタートアップの成長を応援する投資家・研究機関・大学・自治体の活動を支援する税制や制度など、総計69の支援策を紹介しています。
 

2-2. 自治体によるスタートアップ支援

東京都創業NET(東京都)
東京都のスタートアップ支援では、セミナーから事業立ち上げまで、スタートアップから事業計画、開業支援、さらには創業者どうしの交流まで、様々な情報を幅広い方々にワンストップでの支援をしています。また、イベントも開催しています。東京都ではプレシード期~シード期の中でも、ステップ1 (入門編)、ステップ2 (計画編)、ステップ3 (実践) と3段階のステップに段階分けし、幅広く支援を行っているので、事業の援助をして欲しい部分にフォーカスした支援を受けることができます。

オール大阪起業家支援プロジェクト(大阪府)
オール大阪起業家支援プロジェクトは、ワークショップやセミナーが特徴的です。
『資金調達の基礎実務』という資金調達に関する10分動画のシリーズや、『働きながら起業準備』という5分のワンポイント動画を公開しています。
大阪経済を支える起業家を発掘・育成して、大阪経済の持続的な成長を実現するプロジェクトです。

こうちスタートアップパーク(高知県)
高知県のスタートアップ支援では、セミナーによる支援が特徴的です。事業計画書の作成に関するような専門的な内容から、SNSの使い方など幅広いテーマでセミナーが行われています。基本的には無料でサービスを受けることが可能ですが、ビジネスプランを事業ベースに3ヶ月間で完成させていく実践プログラムに関しては有料です。

スタートアップ交流拠点 CO-DEJIMA(長崎県)
長崎県のスタートアップ支援では、『スタートアップ交流拠点 CO-DEJIMA』という拠点による支援が特徴的です。ここでは、無料もしくは低価格でミーティングスペースやスクリーンなど各種備品が使用することができます。また、セミナーや各種イベントも開催しています。
 

2-2. 民間企業のスタートアップ支援

NTTドコモ・ベンチャーズ
NTTドコモ・ベンチャーズは、スタートアップ企業の構想実行力とNTTグループの社会実装力、それぞれの思いを束ね、未来への推進力を生みだすことを目指しています。活動の柱は「共創サポート」「スタートアップ投資」です。シード・アーリー期のスタートアップを対象に学びの場とPRの場を提供するイベントの開催、革新的な技術・ビジネスアイデアを有するシード・アーリー期のスタートアップを対象にインキュベーション支援なども行っています。

KPMGジャパン
KPMGジャパンは、時代の変化に即応した専門分野別のサポート体制とグローバルに事業を展開しようとする企業へのサービス体制を増強し、継続的向上を図るとともに、KPMGジャパン各社、大学、取引所、金融機関等との連携体制を強化し、成長を志向する企業の拡大するニーズに対応し、タイムリーで質の高いサービスの提供を目指しています。
法律関係に強い法人のため、上場準備会社に対してビジネスモデルを理解し、実態に応じた会計・監査上のポイントを適時適切に提供するなど、上場準備の支援が特徴となります。

サイバーエージェントキャピタル
サーバーエージェントキャピタルは、インターネット関連ビジネスで、マネジメント・リーダーシップに秀でた起業家が率いる、グローバル展開を志せるベンチャー企業への投資を目指しています。
単に出資するだけでなく、サービス開発支援、マーケティング支援、事業・組織構築のノウハウ提供、ハンズオン支援等を行っている点が特徴です。

楽天キャピタル
楽天キャピタルは、Eコマースをはじめ、モバイルサービス、トラベル、デジタルコンテンツなどのインターネットサービス、クレジットカードをはじめ、銀行、証券、保険、電子マネーなどのFinTech (金融) サービス、さらにプロスポーツなど革新的なビジネスを展開する世界のスタートアップに投資を行っています。投資先のニーズに応じて、同社が保有する知見・経験、楽天エコシステムにおけるデータを活かした支援を行う点が特徴です。
 

3. スタートアップのEXIT戦略 (出口戦略)

スタートアップには欠かせないのが、EXIT戦略 (出口戦略) です。EXIT戦略とは、株を保有する出資者 (創業者・ベンチャーキャピタルなどの投資ファンド等) が、これまで資金調達で支援してきたスタートアップ企業から利益 (リターン) を回収する経営戦略を意味する言葉として使われています。
そのEXITの方法は大きく2つあります。株式市場への株式公開 (IPO) と株式譲渡によるM&A (バイアウト) です。いずれの方法も大金を獲得する方法なのですが、経営者や株主などの利害関係者にとっては大きな違いがあります。ここではその2つのEXIT方法について紹介します。

 
3-1. IPO(新規株式公開)

IPOとは「initial public offering」の略で、株式上場や新規公開株と言われることもあります。自社株式を証券取引所に上場させ、一般に株式を公開し、誰でも株式を取引できる状態にすることを示しています。金融市場から幅広く資金調達をすることができ、経営者にとっては引き続き「経営権」を保持したままEXITすることが可能です。従業員や取引先にとっても、IPOは引き続き同じ経営者が経営を行うため、雇用や取引の安定が見込まれるというメリットがあります。さらに、会社自体の資金調達力や信用力が大きくなるため、従業員の活躍の場が広がり、モチベーションのアップ、ストックオプションによるキャピタルゲインを手に入れることもできます。
一方で、IPOを成功させるのは簡単ではなく、反社会的勢力とは一切関係がないことの表明や法律を遵守していることを証明するための社内体制の整備が必要となり、さまざまな手間やコストが発生します。途中で断念する結果となる可能性もあります。また、上場すれば終わりというわけではなく、株主に対する責任を果たす必要があり、報告書の作成、株主総会の開催など、引き続き、手間と費用が掛かり続けます。

 
3-2. M&A(合併/買収)

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の頭文字をとったもので、軌道に乗ったスタートアップ企業をほかの事業会社やファンドに売却 (株式譲渡や事業譲渡など) し、多額の資金を手に入れ、ベンチャーキャピタルはそこから投資資金を回収します。経営者にとっては売却益の獲得や、経営者としての重責がなくなるというメリットがあります。また、IPOに比べ手間やコストを節約しながら短期間でEXIT出来るというメリットがあります。
しかし、経営権が売却先に変わり、経営者が変わるため、従業員のモチベーション低下や離職にも繋がりかねず、取引先にも影響を及ぼすというデメリットもあります。そのため、M&AによってEXITを獲得する場合は利害関係者に説明をしておく必要があります。
また、株主にとってのM&Aのメリットは、株式を即座に売却できることです。IPOでは株式売却による暴落を防ぐため、上場後、一定期間株式を売却することは禁止されており、IPO直後に株式を現金化することはできません。一方、M&Aではスタートアップ企業を売却する時に株式を売却することになるのですぐに現金化することができます。

 
4. まとめ

2022年11月28日、岸田内閣より、スタートアップ育成に向けた過去最大規模となる1兆円の予算措置の閣議決定が発表されました。また、2027年度にはスタートアップの投資額を10兆円規模に引き上げるほか、ユニコーン企業を100社創出し、スタートアップ企業を10万社創出することを目標に掲げています。その達成に向けて、政府は下記の3本柱を5か年計画の軸としています。

1.スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
2.スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略戦略の多様化
3.オープンイノベーションの推進

様々な分野で多くのスタートアップ企業が創出されることで、日本全体の持続的な経済成長に繋がるよう期待しています。

IPO、M&Aの際の企業調査は重要です

「取引先企業の代表者にトラブルが発覚」

「合併予定先が実は反社会的勢力と関係があった」

事が進んでからでは後戻りが出来ない【IPO】【M&A】の際には
ネガティブ情報抽出、反社会的勢力との関係性の情報抽出など

創業1965年 総合調査会社トクチョーにまずはご相談ください。

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