偽名や戸籍偽装の人は信用できない!ネームロンダリングの現状を知る
2020/11/26
ネームロンダリングとは都合の悪い出自や過去の経歴を隠し他人に成りすまし偽名を使う行為です。
その行為自体は違法とは言えませんが、ビジネスパートナーとしてその人を信用できるかと言えばNOです。もちろん結婚相手としても避けて通りたい人物でしょう。
「えっ?そんな事をする人がいるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、この世の中でネームロンダリングが行われている現実があります。
本記事では人がネームロンダリングをしなければならない状況を俯瞰し、どのような手法で自分の過去を隠しているのか?それを見破る方法があるのか?などを紹介してまいります。
目次
ロンダリングとは、英単語"laundering"のことで、洗濯する、きれいにする、アイロンがけするなどを意味しますが、日本では「マネーロンダリング」などネガティブな言葉として使われています。
「ネームロンダリング」も主には不正を隠す、犯罪行為をカモフラージュするなどのための手法として使われています。
この章ではどのような目的で使われどのような方法でロンダリングが行われるのかを解説します。
2013年、東京都の知的障害者の男性が本人に覚えのない偽装養子縁組を何度もさせられ、姓が変わる度に犯罪に悪用するための銀行口座が開かれていたという事件がありました。養子縁組は嫡出子への財産相続や養育環境を保全することが主な目的ですが、この制度が悪用され戸籍・姓名の偽装に使われるケースが横行しています。犯罪集団や暴力団などが多重債務者や生活困窮者などの弱みにつけ込んで改名させる手口の大半が犯罪行為の目的で実行されています。
また、戸籍の人物そのものに成りすまして生活をしたり他国の工作員がスパイ行為を行ったりする場合は独身の一人暮らしで身寄りが無い人がターゲットとされます。そして、元々の戸籍の人物の存在が邪魔になるため、拉致監禁や殺人という事件に発展してしまいます。こうした戸籍の乗っ取りのことは「背乗り(はいのり)」と呼ばれます。
松本清張の小説に「砂の器」という名作があります。これは太平洋戦争で焼失してしまった戸籍の原簿に戦後のゴタゴタの中で赤の他人が潜り込み、その戸籍の子供として成人し音楽家として名声を得てしまうことで引き起こされる殺人事件の話でした。これも今風に言えばネームロンダリングと言えるかもしれません。
偽装養子縁組や結婚で姓が変わる事で借金取り立ての追手から一時的にも逃れることができる…あわよくば完全に逃げ切れるかもしれない。これがネームロンダリングが実行されるもう一つの理由です。
逆にヤミ金融などは債権を回収するために債務者に対して戸籍を偽装させて新たな借り入れを強要する事件も起こっており問題となっています。前項のケースも合わせて、このように戸籍を偽装して別人に成りすましてしまう行為は『戸籍ロンダリング』と呼ばれています。養子縁組などにより改姓を繰り返し、改姓前の借金などそれまでの負債から逃れ、新たな姓で借り入れやローンを組むなどし、目一杯になるとまた養子縁組などで改姓し、別人になると云う事を繰り返す行為。戸籍上全く別人に成ってしまえば借金から逃れられるというスキームが存在してしまっているのが現在の日本の法制度です。
企業経営者や個人事業主で、経営する事業の行き詰まりからビジネス上の犯罪に手を染めて逮捕されたり、大きな債務を踏み倒して行方をくらましたりする人物は存在します。こうした人物は再びビジネスを始めるのに過去の経歴やネガティブ情報を隠さなければなりません。そのために苗字を変えてみたり、名前の一字を違う漢字にしたりと改名を試みます。これもある種のネームロンダリングです。
当社で依頼を受けた取締役候補の採用調査で「城田孝太郎」(仮名)という人物の調査をしたところ、この名前では6つの職歴のうち直近1社の情報しか得られませんでした。
しかし、同じ読みの「耕太郎」の名前で前々職の職歴の情報が見付かります。
そしてその「城田耕太郎」名では、職歴に記載の無い企業A社の代表者で詐欺事件に加担したとして逮捕された記事が発覚。さらにはA社のその当時の商業登記簿を見ると代表者は「代田耕太郎」でした。
そしてその名前ではさらに脱税容疑での逮捕の記事まで見付かりました。
(このケースは実際の調査事案を基に架空の氏名に変更し一部判明結果も変更してご紹介しています。)
過去の逮捕歴・前科に関する情報や人物への誹謗中傷の書込みがインターネット上に広がってしまった場合、シェアやコピーがされてミラーサイトが次々に生まれてしまうことがあります。そうなるとどんな対策を講じてもその書込みをインターネット上から完全に消し去ることは極めて困難になります。こうしたネット上のネガティブな書き込みや画像のことを、半永久的に消せないことから入れ墨に例えて「デジタルタトゥー」と呼んだ弁護士がいました。
2014年 欧州司法裁判所では「忘れられる権利」が認められる判決が下され、Googleなど検索サイトへの削除命令が出され、この流れがスタンダードになりつつありますが、日本ではまだまだ法整備も進まずに泣き寝入りしている人が沢山いるようです。
ネガティブな記事や書き込みが原因で、就職活動や勤務、交際や結婚、賃貸物件の審査などの場面で不利益を受け、家族にまで火の粉がかかってしまうこともあります。
誹謗中傷の書込みなどが事実無根の場合、被害者はまず弁護士を介して掲載サイトや検索サイトに対して削除請求を行います。請求は裁判所に認められ時間が掛かりつつも削除されていきます。仮に拡散の範囲が広すぎて削除することができず影響がいつまでも色濃く残る場合は、戸籍の姓の改名も認められます。
一方、前科・犯罪歴などの記事の場合、社会的公共性や公益的側面から削除が認められないことの方が多いのが現状です。そして戸籍上の改名も個別の事情によって100%ではないものの認められないのが通例です。それでもビジネス界で復活をしようとすれば、通称・偽名ででも名前をロンダリングし過去を隠して生き抜こうとすることになるのです。
古今東西問わず悪知恵を働かせて人から金を巻き上げる悪徳ビジネスは数多存在します。
『投資詐欺』『悪質リフォーム』『マルチ商法』『高級商材の訪問販売』など様々な業種業態の企業が人から金を掠め取ろうと虎視眈々と狙っています。そしてクレームが起き、問題が発覚し、足が付きそうになると社名変更をして別の会社に成りすましてまたぞろ悪徳商売を再開するのです。
一方、まじめにビジネスをしている企業でも、【一社員の不祥事が大々的に報道されてしまう】【粉飾決算で摘発される】【製品不良が原因で事故を起こす】【不法投棄で行政処分を受ける】など様々なネガティブ・トラブルで社会的信用を失墜してしまうことはあります。
真正面からトラブルに取り組んで信用回復することが真っ当な企業の生きる道ではありますが、中には社名変更をすることで過去に抱えた問題を隠そうとする経営者もいます。
法人格を持つ企業の場合は必ず商業登記がされていて、社名変更も登記簿に記載されています。
これから取引や提携を進める企業に何か不審な点があれば、商業登記簿を閲覧し社名変更の遍歴を確認して、旧社名でネットや記事の検索をするだけでネームロンダリングを暴きリスクを回避できる可能性があります。
そもそもネームロンダリングはその当事者が意識的に過去を隠そうとして行うものですから、見破ることは難しいと言わざるを得ません。ビジネスパートナーとして、一生の伴侶となる相手として、抜き差しならない関係性が生じる時に、相手の開示する事・言う事を鵜吞みにして信用してしまっては名前の嘘を見破ることはまずできないでしょう。
あまりにもキレイな経歴だったり、不自然に固有名詞が隠されていたり、キャリアのわりには本人の情報が少なすぎたりする場合は、少しだけ性善説を棚に上げてその名前が本物なのかを疑ってみなくてはなりません。
本章では見破ることが難しいネームロンダリングの突破口を開くためのいくつかの手法を概説します。
ビジネスパートナーや婚約相手、トラブルなど交渉相手の名前に疑義があった場合、戸籍などを確認することができるのでしょうか?基本的にはNOです。住民基本台帳法や戸籍法により、本人以外の第三者が戸籍などを取得できるのはその記載事項を利用する正当な理由がある場合に限られています。
例えば債権者が債務者の所在情報を確認する必要があるなど法務的なアクションの場合など極限られたケースでの取得は認められています。債権回収、名誉棄損など何らかの民事訴訟を起こし弁護士に正式に委任した時には相手の戸籍を開示閲覧できるということになります。
その人物が過去「企業の代表者や役員だった」「マスメディアからインタビューを受けた」「対談記事がある」「趣味活動で情報発信している」「SNSを活用している」など多少なりとも世の中に露出されていれば、インターネットの検索で何かしら引っ掛かりが出てきます。その検索の際に少し小技を使ってみることで、同じ読みだけど漢字が違う人や、似ている名前の人がヒットすることがあります。
例えば・・・
「城田孝太郎」を「城田こうたろう」で検索すると
⇒ 浩太郎 / 耕太郎 / 航太郎 / 幸太郎 と漢字の異なる「こうたろう」がヒットします。
それらの掲載されるサイトの内容で対象者との関連性を探るのです。これは大した手間ではありませんから、相手の素性や経歴に気になることがあれば必ず実行するべきです。
気になる人物を記事検索して同姓同名や漢字違いの類似氏名の人物がヒットしたとします。
その記事が事件に関する逮捕の記事だった場合、そこには対象者の住所 (市区町村まで記述)、年齢 (逮捕時の) が記載されています。
その記事内容だけでは同一人物かどうかは判断できませんが、経歴上過去にその住所にいた可能性は無いか?得ている生年月日と照らし合わせて年齢が一致していないかを確認します。
対象の人物が企業の代表者であれば色々な事を調べることができます。公的な機関での登記や許認可には本人の住民票上の氏名や住所での申告が義務化されているケースが大半なので、これらに掲載されていれば本名である可能性が高いのです。また不動産を所有する人の場合、固定資産税課税との連動が必要となるため、登記される所有者名は住民票記載の本名である可能性が極めて高いです。
ビジネス上の名前が疑わしい場合は押さえておくべき情報源で、偽名や通称を見破り本当の人物像に迫ることができる可能性があります。下記にチェックすべき項目を列記します。
1)商業登記
2)法人登記
3)不動産登記
4)建設業・宅建業者等企業情報
対象人物が代表を務める企業がなんらかの許認可事業の場合はその管轄省庁のサイトで登録情報を検索し代表者の項目をチェックします。
企業調査や人物調査などを扱う調査会社は、一般の人では簡単に手に入らないような非公開の情報や名簿などの情報が入手できる可能性があります。例えば学校の卒業生名簿が手に入れば、卒業当時の名前を確認することができます。学生の時分に通称名や偽名を使っている人はまずいないでしょうから、そこに記載されていればまず間違いなく本名です。
また、調査会社は対象人物に悟られないように情報収集をする内偵調査 (取材や聞き込み等による調査) の手法を持っています。開示されている経歴や関係団体、家族など対象人物を知る様々な情報源から本人の本当の素性を炙り出します。
費用と時間はそれなりに掛かりますが、ネームロンダリングに騙されて後で大きな損害を被るリスクを考えると、調査会社に相談することも一つの方策と言えるでしょう。
これから大切な関係を築こうとする人物に関して、相手の言う事を100%信じてしまうことで甚大な被害が生じてしまうリスクは存在します。あなたの経験や直感から何かおかしいなと感じたら、相手の名前が本名なのか?と少しだけ疑うことに罪悪感を持つ必要はありません。
そしてしっかりと相手の素性を見極めてから晴れやかにビジネス・人生の扉を開きましょう。
素性調査のご相談なら創業1965年のトクチョーへ
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