調査会社が見た経歴詐称の手口!履歴書・職務経歴書の「バレる嘘」
2019/05/31
就職、転職活動の際に、履歴書・職務経歴書に嘘を書いたことはありますか?
書類選考や面接で少しでもアピールができるように、より良い条件で採用されるために、はたまた黒歴史を隠すために、履歴書・職務経歴書にはさまざまな理由で嘘が書かれています。
総合調査会社トクチョーは、お客様企業からの依頼で年間数千件以上のリファレンスチェック (採用候補者の職歴調査) を行い、多くの嘘に遭遇しています。
バレてしまったときの悲しい結末を聞くことも、決して少なくありません。
そんな調査のプロの視点から、読者諸氏の今後の転職活動に役立つこと間違いなし (?) の「履歴書・職務経歴書のバレる嘘」を紹介します。
目次
そもそも履歴書・職務経歴書 (以下「応募書類」) に嘘を書いてバレてしまったらどうなるのかを押さえておきましょう。内定通知前と内定・入社後、その他の影響に分けて解説します。
内定通知前に嘘がバレた場合、採用判定は当然不合格になることが多いです。「多い」という表現に驚かれた方もいるかもしれません。実は、ごく稀に「応募書類の小さな嘘は気にしない。入社後に期待する成果を上げられればそれでいい」という会社も存在します。そのような会社は、営業ノルマが高かったり、働き方が激しかったりと、人材採用で一定の量を求める会社であり、入社にも覚悟が必要です。
しかしながら、大多数の会社、人事担当者は応募書類の嘘を徹底的に嫌います。どんなに面接その他の採用試験の結果が良くても、応募書類に嘘があれば信用できない人間と判断されて採用されません。
内定通知のあと、また入社後は雇用契約が成立しているため、嘘の程度や採用条件によって結果に差が出ます。
採用条件に「〇〇の資格を有すること」や「△△のスキル・経験があること」など、特定の資格やスキル・経験が記載されていて、その部分に嘘がある場合は、嘘がなければ採用しなかったということで、内定・雇用契約の取り消しや解除によって解雇される可能性があります。採用条件に関わらない嘘の場合でも、会社から信用を失い、注意・訓戒、減給、部署異動(左遷)などの憂き目に遭うでしょう。
もし、バレたときに何も処分がなかったとしても、人事部や上司、経営者から「採用時に嘘をついた人」というレッテルを貼られてしまっては、昇進・昇給は期待できません。
嘘がバレると、採用企業との関係が悪化するだけでは済まないこともあります。人材紹介会社や派遣会社経由の採用だった場合は、さらなる影響があります。採用企業からすると、「嘘つきを紹介された」として、紹介元、派遣元にクレームするのが普通だからです。
なかには黙って紹介元、派遣元企業との関係を解消する場合もありますが、継続的に人材を採用する企業の場合は簡単に人材紹介会社や派遣会社との関係を切ることはできません。クレームを受けた人材紹介会社も派遣会社も、二度と嘘をついた人に仕事を紹介することはないでしょう。
人材紹介会社も派遣会社も、キャリアシートなどに書いた事項に嘘がないことの宣誓書を書かせますが、その宣誓を破ったことにもなるため、契約内容と損害の発生によっては損害賠償請求される可能性すらあるのです。
「応募書類の嘘は、ダメ、ゼッタイ」なのです。
嘘がバレたらどうなるかを確認したところで、ここからは、「調べられるとバレる嘘」の代表例を7つ紹介していきます。
ダンディな声で有名な経営コンサルタント系のタレントが「MBA取得」という経歴詐称で注目されたことで、学歴を偽ることが経歴詐称で多いように思われています。
しかし、実はこれはあまり多くありません。
多くはないのですが注目される理由の1つは、そもそも学歴詐称がバレやすいからかもしれません。
50年以上のトクチョーの調査業の歴史の中で、常に若干数存在しています。
たとえば、以下のようなケースと理由が見られます。
●卒業校を偽る→学歴偏重採用を突破するため
●大学の卒業学部を偽る→より偏差値の高い学部や採用で有利な学部にするため
●入学/卒業年月を偽る→浪人や留年を誤魔化すため
●短期留学していた海外の大学に「在学」ではなく「卒業」と偽る→英語力と海外経験をアピールするため
●海外の「〇〇カレッジ」など、名前はそれっぽいけれど大学ではない学校の学歴を「大卒」として偽る→大卒を偽装するため
●大学院卒の場合、大学院は正直に伝えて大学のみ卒業校を偽る→有名大卒をアピールするため
どれも卒業証書や学位記、成績証明書の提出を求められたり、卒業生名簿で確認されたりするとバレてしまいます。
最近は転職回数5、6回くらいの転職希望者は珍しくなく、10回を超えるキャリアを持つ人もいます。
業界によって差はありますが、全体の傾向として数ヵ月などあまりにも短期間に転職を繰り返していなければ、転職経験社数が多いからといって不利になるということは聞かなくなりました。
それでも、転職経験を少なく見せたい、在籍期間を長く見せたいと、転職回数と在籍期間に関する嘘は依然として最も多い嘘です。
このタイプの嘘は、「中抜き」と「空白埋め」に分けられます。例えば、「A社2年→B社1年6ヵ月→C社3年」という職歴のうち、B社の経験をなかったことにして、「A社3年→C社3年6ヵ月」というように、実際よりも転職回数を少なく見せる嘘をつくのが「中抜き」です。
一方、「D社5年→無職1年→E社2年」という経歴のうち、無職の期間をなかったことにするため、「D社5年→E社3年」というように、仕事をしていなかった時期がなかったように見せる嘘をつくのが「空白埋め」です。
どちらもリファレンスチェックや年金手帳の記載事項で、簡単にバレてしまいます。
どのような肩書で、どのような仕事をしていたかについては、微妙な嘘が多い項目です。
ヒラ社員や主任だったのに「マネジャー」としたり、部下のいない「担当課長」だったのに正式な「課長」としたり、あまりにかけ離れたものにする嘘は多くないようです。
エンジニア採用の現場では、「PM(プロジェクト・マネジャー)でした」というSEの方は多いものの、面接でスキルや経験について詳しく話を聞くと、「コードの読み書きができないなんちゃってPM」や「1人プロジェクトの担当者≒PM」なども紛れているという話を、人事担当者から聞くことがあります。
肩書は本当にマネジャーでも、部下は数人しかいなかったのに「10人」などと2ケタに乗せてみたり、課長として5人の部下を見ていただけなのに同じ部の全ての課員も含めて「20人の部下がいました」と言ってみたり、少し「盛った」嘘を見かけることも少なくありません。
IT開発案件のプロジェクトメンバーの数え方には微妙なものがあり、メインで携わっていなくても少しでも関わっていればメンバーとして延べ人数で数えたり、直接は接していなくても下請けの会社の従業員全員をメンバーとみなしたり、嘘とは言えないような「盛った」数え方もあります。
違う部門にいたことにしてしまう嘘もあります。
転職希望先の部門と同じ部門名で経験者であるかのように見せかけるためです。
部門ではなく関わってきたプロジェクトの内容、規模、経験数の嘘はIT業界でありがちです。
開発言語が違ったり、数人のプロジェクトを十数人としたり、ヘルプで一時的に参加しただけのものも含めてたくさんのプロジェクトに携わってきたように見せたりといった嘘があります。
どの項目もリファレンスチェック、面接の突っ込んだ質問でバレやすいです。
英語をはじめとした外国語の運用能力、「Word」「Excel」「PowerPoint」「Access」といったオフィスソフト、プログラミング言語などが応募条件になっている場合にも嘘は少なくありません。
応募条件で「必須スキル」になっていると嘘はつきにくいのですが、「歓迎スキル」となっている場合は、「ごまかせるのではないか」という気持ちが働くためか、嘘をつく人が多いようです。
どの項目も、筆記試験や実技試験でバレますし、採用を突破しても実際に働き始めたら簡単にバレてしまいます。
意外と多く見られるのが、雇用形態の嘘です。派遣社員、業務委託社員だったのに、正社員だったと偽るケースです。あえてはっきり書かずに、嘘ではないものの正確ではない記載の仕方をする場合もあります。
履歴書には正社員として短年で数社を渡り歩いているように書いてあり、面接時に転職理由を聞いたところ、「派遣会社の意向で派遣先が変わったためです」と悪びれずに答えた応募者がいたという話もあります。雇用形態の嘘も、リファレンスチェック、年金手帳、源泉徴収票などでバレてしまいます。
やはりというべきか、少しでも転職後の給与を上げるために現在の給与水準について嘘をつくケースがあります。今までで一番多かったときの年収を答えたり、変動する賞与部分が最高だった場合の金額を答えたり、単純に希望年収額と同じ額を現在もらっているように見せかけたり、といった具合です。
何回か転職している人はやならないと思いますが、初めて転職する人などは新会社で源泉徴収票を提出することを知らないことがあり、大幅に釣り上げて伝えた現在の年収との差が簡単にバレてしまうということがあります。
職歴の中で、仕事をしていた企業を偽る履歴書もあります。グループの親会社に就職したことにしたり、よく知っている競合企業や元請け企業で働いていたことにしたり、確認が取りにくいと考えているのか倒産や合併して消滅した有名企業にいたことにしたり、という嘘があります。
自分の市場価値を高く見せようとしているのかもしれませんが、これらもリファレンスチェック、年金手帳等の確認でバレてしまいます。
番外編として、過去に1回だけ遭遇したレアケースを紹介します。それは「代筆」。昔は字が書けない人も少なくなく、今も存在する「代書屋」さんにお願いしてきれいに履歴書を作成してもらうことは、わりと一般的なことでした。
しかし、それは「今は昔」。現代の履歴書はパソコン打ちか、心を込めて自筆で書くことが推奨されています。パソコンで作成したものと手書きのものは、大体半々くらいの割合になってきているようです。
我々のクライアントである、とある企業の中途採用の候補者は、とても美しい字の履歴書で、経歴も立派。調査で経歴にも嘘はありませんでした。ところが、最終面接前に企業が抜き打ちで課していた原稿用紙1枚の形式的な小論文試験で、本当の字が発覚します。その企業の担当者曰く「解読が必要というような文字」で、なにより「雑」だったとのこと。
最終面接で履歴書の字について問うと、達筆な親に頼んだというのです。「新卒ならまだしも (?)、30過ぎた大人がここで親に代筆頼むのか…」と面接官は唖然とし、残念ながら、採用は見送りとなりました。
いかがだったでしょうか。これまで述べてきた以外の嘘でもバレるものはバレるし、たとえ嘘をついて背伸びをして採用されても、いつか嘘がバレる恐怖を持って仕事を続けるのは辛いことです。
一時の誘惑に負けて、履歴書・職務経歴書に嘘を書いてはいけません。「本人の心の中だけに留めていることだから、知られるはずがない」と思われがちな退職理由ですら、ネガティブな出来事がきっかけで退職した場合に、リファレンスチェックを通じて判明したり、嘘をついていることによる矛盾を面接で突っ込まれてバレてしまったりするケースも多々あるのです。
応募者の職歴に嘘があることをレポートで報告したクライアント企業の社長から、「こんな嘘をつかなくても、ありのままの職歴を書いてくれたら間違いなく採用していたのに、本当にもったいない。なんで嘘なんかついたんだろう……」と残念そうに話されたことがあります。くれぐれも年間数千件の調査をしているトクチョーのような調査会社があることを、お忘れなきように。
今の自分をより良く見せたいのであれば、今いる場所で自分を磨くしかないのです。
※この記事は事実を基にしていますが、登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。守秘義務のため、依頼者や調査対象者が特定できないように、事件の詳細は設定を変更しています。
※本記事は、トクチョーがダイヤモンド・オンラインに寄稿した「調査員は見た!不正の現場」シリーズの「盛ってはダメ!調査会社が明かす履歴書・職務経歴書の『バレる嘘』」を改題・編集したものです。
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